過去の勉強会

2011年10月30日(日)

プロボクサーを撮り続ける片腕のカメラマン
~彼が残そうと考える本当の写真とは~

vol.124

林建次さん(フリーランス写真家)

■日にち
2011年10月30日(日)
■時間
10月30日(日)14:00~17:00
■場所
ジャマイカウドン
■ディレクター
渡辺 好雄

プレゼンターは、右腕の機能を失いながら、片腕でプロボクサーを
撮り続ける写真家 林建次さんです。


冒頭、BSフジの番組『キズナノチカラ』に出演された映像で、
プロボクサー榎本信行さんのボクサー人生に寄り添って写真を撮ってこられた
様子をご紹介しました。


続いて、林さんがバイク事故に遭った当時のことを
ディレクターの私とトークディスカッション形式でお話頂きました。
事故当時のことを林さんは、「神様に怒られたと感じた」と振り返られます。
この時に、これからカメラマンとして写真を撮って行こうと決意をされたようです。
3年間のリハビリを経て、自身の障害のことを話すことなく写真館に就職された
林さんの行動力に驚かれた方も多かったようです。


その後、大きな転機となった、プロボクサー大嶋宏成さんのお話を伺いました。
大嶋さんは15歳で極道入りとなるも、少年院から出所後、
プロボクサーになることを決意されました。
当時、大嶋さんは日本タイトルマッチ戦を控えており、
取材陣からも引っ張りだこの人気ボクサーでした。


そんな状況の中、林さんはまず大嶋さんとの距離を縮めるため、
毎日ジムに通い、大嶋さんの写真を撮り続けました。
そして日本タイトルマッチ戦での大嶋さんの敗戦。去っていく取材陣。
しかし、林さんは大嶋さんから離れず写真を撮り続けました。
大嶋さんのやさしい側面や仲間から愛される大嶋さんの姿を知り、
「一人のボクサー人生を最後まで看取る」というスタイルで、
それ以降、出会うプロボクサーを撮り続けるようになったそうです。


後半は、林さんがプロボクサーを撮る際に、カメラマンとして貫く
3つのスタイルについて、実際に撮られた写真を参加者に見せながら、
お話頂きました。


一つ目は、「ボクサーのありのままを撮る」ということ。
最初は、負けた試合は全く写真を撮ることができず、それを後悔したとのこと。
負けた試合も含めて、全て写真を残すことを決意された林さんの写真には、
担架で運ばれる痛々しいボクサーの姿も。
真正面から被写体に向き合う林さんの姿勢をお話頂きました。


二つ目は、「リングインする前の覚悟の瞬間」について
「神様がお祈りしているように見える。」とおっしゃる林さんの作品は、
決して誰も踏み込めない、ボクサーとの信頼関係を築いてこられた林さん
だからこそ撮れるものでした。
参加者の皆さんも真剣にその写真を見入っていたようです。


三つ目に「リングを降りたボクサー」をテーマに、
ボクサーの闘志あふれる写真と対比させてご紹介頂きました。
家族と触れ合う姿、サラリーマンとして働きながら続けるボクサーの姿、
お寺のお坊さんをしながらボクサーを続ける姿など、ボクサーの、
ボクサー以外の一面を切り取った写真を見せて頂きました。


トークディスカッションの最後は、
“障害を抱える林さん”にスポットを当てました。
障害をハンディとして意識することなく、
「障害のあるなしは関係ない。人生の切り開き方は同じで、
努力を重ねることで神がかった写真が撮れる。」
と仰る前向きな姿勢に、参加者の方も強く印象を受けたようでした。


最後に、参加者同士、林さんのお話を聞いた感想をシェアしました。
林さんの、被写体と真剣に向き合う姿勢、ハンディを物ともしない
前向きな姿に影響を受けた等、様々なご意見があがりました。


今回、林さんのお話を聞いて、
プロボクサーと信頼関係を築いたうえに残してこられた林さんの写真は
これまで苦労して自身のハンディと闘い、ハンディを受け入れて、
更に、それを乗り越えたからこそ、達成できたのではないかと感じました。
その時初めて、障害を持つ持たないの垣根を越えて、
一人のカメラマンとして輝きを放つ、そのように感じました。